街歩きレポートなんて大層な名前を付けているが、ただの散歩である。
「銀ブラ」なんて言葉があるが、私のは、まごうこと無きただの散歩だろう。
あまりなじみのない言葉の「銀ブラ」とは銀座をぶらぶらすることである。
明日自慢できる知識なので、覚えておこう。
柳通りをまっすぐ歩く。「銀座は高級ブティック」の街なんて言うけれど、せわしなく働くサラリーマンたちの姿が目立つ。ビジネス街だなあなんて思いながらも、銀座一丁目だからか。「花街」なんてこの場面だけを切り取れば、真逆の印象を抱くだろう。バブルの時代に金融系の会社が銀座一丁目に入ったことがきっかけのようだ。
そんなこんなで歩いているとといい時間になってきた。午後17時頃、そろそろ晩御飯のことを考え始める時間だ。カラスが鳴いたら、腹の虫も鳴くのである。夕焼けを見ると子供時代を思い出すのは、なぜなのか。
まあ、こういうのを「エモい」というらしい。エモーショナルの略語だろう。郷愁という日本語が当てはまるのかな。
当時は、母が買ってきた総菜屋のコロッケやメンチカツはあまり好きではなかった。思い出は美化されるなんて言うけれど、あの味が時折恋しくなる、なんて考えていると、ひっそりと佇む総菜屋を見つけた。「銀座さとう」さんだ。ここに店を構えてからは、大体10年ほどだという。
惣菜を買いに来たお父さんらしき人物と並びながら待つ。妻に頼まれたのか、それとも買い食いなのかはわからないが。心なしか楽しそうに見えるので買い食いだろう。学校の帰りに買い食いをして食べたもののおいしさは格別だった。隠れて飲んだサイダーの味を超えるサイダーに出会うことはきっとないだろう。
おすすめだという丸メンチを頼んで、ものの一分もしないうちについに来た。サクサクの衣に、あふれる肉汁。ヨネスケならダッシュで突撃してくるレベルだろう。「突撃!知らない町の総菜屋」なんてショーもないことを考えながら、ほくそ笑む。この姿を見られたら、確実に不審者だろう。美味いものを食べてるときにこぼれる笑顔ということで、職質を受けても、そう答えよう。とにかく肉のコクがあふれたメンチのうまさは格別だった。
そろそろ会社に戻って、記事にまとめないといけないな、足早に歩く。口の端に残った衣をしっかり落として、証拠隠滅は完璧だ。
ばれないことを急いで帰る姿は買い食いがばれないようにする子どもそのままだったかもしれない。
こんなおっさんが少年に戻れる瞬間があふれているという意味ではいい町なのかもしれない。
銀座さとう
電話番号 | 03‐3561‐2939 |
営業時間 | 11:00~18:30 |
住所 | 東京都中央区銀座1-14-1 |
アクセス | 東京メトロ有楽町線 銀座一丁目駅 11番出口 徒歩4分・都営浅草線 宝町駅 A3番出口 徒歩5分 |
定休日 | ※当面の間無休で営業中 |
予算 | 「元祖丸メンチカツ」1つ240円からとなっております。 |
クレジットカード | 現金のみの対応となっております。 |
公式hp | https://www.shop-satou.com/shop/ginza/index.html |